「バナナがすきでね~」 「へぇ~、いつも召し上がっていたんですか?」 「そう、シロップかけてね~」 「えっ、バナナにシロップですか!?」 これは葬儀打ち合わせ時の、 ご家族とコーディネーターのちょっとした会話です。 葬儀の日、ご家族は悲しみにくれる暇もなく 次々と葬儀の準備を整えていかなければなりません。 ご親族への対応、おまいりに来られた方へのご挨拶など…。 そうこうしているうちに、葬儀も終わり、まもなく出棺の時間。 「お父さん今までありがとう、これからはゆっくり休んでね」 お柩にお花を入れ終わった時、 コーディネーターがご家族のところに折詰を持ってきました。 「お父様がお好きだったバナナです。」 「お父様がいつもしていらしたように、バナナをバターでソテーして、 最後にメープルシロップをかけています。 よろしければどうぞ持たせて差し上げてください。」 こんがりと焼き目の入った甘い香りのバナナを、 ご家族はお父様のご柩に入れられました。 「お父さん、良かったね。ずーっと食べたいって言いよったもんね。」 ご家族はお父様に手を合わせ、出棺していかれました。