お葬儀前の打ち合わせの時、
「主人は竹細工をよく作っててね。自宅に手作りの竹とんぼがあるのよ。」
というお話を奥様から伺いました。
無宗教葬だったため、献花の代わりに竹とんぼをお供えしていただくことを
ご提案し、お通夜の日に持ってきていただくことにしました。

お通夜の朝。奥様が持ってきてくださった竹とんぼは、
段ボール箱いっぱいに入っていました。
「入院中も病室でいつも作っていたからたくさんあって。
こんなにあって本当に困っちゃうのよ。」
少し困った表情で優しく微笑む奥様は、
懐かしそうに竹細工の作品を一つ一つ丁寧に見せてくださいました。

お菓子の包装紙を使った凧、綺麗な曲線のお箸、手作りとは思えない孫の手。
100個はあると思われる竹とんぼは、
全く手抜きしたところがない美しい仕上がりのものでした。
大切にお預かりし、出来る限りたくさんのところに飾りました。
祭壇、メモリアルコーナー、玄関、受付、会食室・・・

「昔から器用やったもんね」
「すごく良くできとう」
「こんなの作られてたんだ。すごーい」
ご兄弟、ご親族、お参りの方から、いろんな会話が始まりました。
中には、ロビーや駐車場で竹とんぼを飛ばす方もいらっしゃいました。
「これはよく飛ぶね。すごいすごい!」
皆様、童心に戻ったような笑顔でした。

一つ一つ、丁寧に作られた、温かい思いを感じる竹とんぼ。
ご主人様は持って行かれたいのでないかと思い、お供えするのではなく、
皆様にお棺に入れていただくことにしました。

ご葬儀の日。奥様から順にお一人ずつ、お柩に竹とんぼを入れていただきました。
故人様のお顔を見ながら、ゆっくり竹とんぼをお柩に入れ、優しく微笑み、
小さな声でお別れの言葉を呟いていらっしゃいました。

故人様が残して下さったたくさんの竹とんぼは、残された皆様の優しい笑顔と
温かいお別れの時間も作って下さいました。